民主党が東日本大震災の被災地の復旧・復興に向けた特別立法の原案をまとめたことで、政府は復興財源の調達策について本格的な検討に入る。政府内では5年程度の時限措置として所得税や消費税などを引き上げ、増税分を復興のために発行する国債の償還財源に充てる案などが浮上している。内閣府の試算では今回の震災の直接被害だけでも最大25兆円に上るだけに、子ども手当など看板政策の見直しによる財源捻出でどれだけ国民負担を抑えられるかも焦点になる。増税の検討は(1)所得税額を一定割合上乗せする増税(2)消費税の臨時増税(3)法人税の引き上げ-の3案が柱。平成22年度の税収見通しから単純計算すると、所得税を1割増税すれば年間1兆円超の増収になり、消費税の税率を1%引き上げる場合、2兆円超の財源が確保できる。法人税も1%増で2500億円程度の増収だ。政府内で有力視されているのが所得税の増税案。所得の多い人ほど負担が大きくなる仕組みで、控除などの適用により被災者への課税を軽減しやすい利点がある。財務省幹部も「消費税は低所得者ほど負担が重くなる逆進性の問題があり、被災者も増税になる。所得税しかないのではないか」と明かす。政府が国民に負担を求める増税の検討に踏み込む背景には財政が悪化するなかで赤字国債発行の余地が限られていることがある。日本の長期債務残高は震災による特別要因を除いても国と地方を合わせて23年度末には892兆円と国内総生産(GDP)の2倍近い水準に膨らむ見通し。政府は今回の震災対策として、道路や港湾などインフラ整備費を建設国債でまかない、それ以外は歳出の見直しに加え、赤字国債での調達を想定する。だが、乱発は国債利払い費の増加を招き、財政破綻の懸念を一層強める。
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